むせ返るほどに濃い匂においを放つ緑を必死にかき分け、ようやく洞どう窟くつから這はい出ると、ぬるい雨はいきおいを増して降り続けていた。空は暗く、もう日が暮れたのか、それともまだ日暮れ前なのかも判わからない。 鬱うつ蒼そうと茂った木々の枝葉を通して、まばゆい雷光が断続的に空を横切るのが見える。あたりにまだ少し焦げ臭さが残っているのは、ほんの二時間ほど前に、すぐそばに落雷があったからだった。 あの落雷を見なければ、ウェンドリンがこの森の奥へとやってくることはなかっただろうし、あの洞窟を発見することもなかっただろう。 「…………」 ウェンドリンは荒い息をつきながら、洞窟を振り返った。 落雷の直撃を受けて崩れ落ちた岩壁に、ぽっかりと横穴が開いていた。長年ホルムに住んでいる古老たちですらその存在を知らなかったであろう、町の地下に広がる未知の洞窟に、ウェンドリンが足を踏み入れてしまったのは、あらがいがたい好奇心と冒険心のせいだった。 しかし、今はそれが迂う闊かつなおこないだったのではないかと後悔している。 「!」
