今天的份
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制御は難しいものの、慣れてしまえば単なる移動手段だけでなく戦闘にも使える、凄まじく有用な魔法だった。
その【天翔】を駆使して、空を行くエミリアのドラゴンに並ぶカリーナ。
かつて自分の師と一緖に見た光景を眼下に見て、彼女は自力でこの景色を見たことによる感慨深さと、いちまつの寂しさを感じた。
そんなカリーナの機微を目敏く察したのか、遅れて横に並んだヘレナが、からかうような笑みを浮かべる。
「やっぽり、カリーナとしてはお師匠様に運ばれたかった?」
「べ、别にわたくしはそんな——」
「そう顔に書いてある」
エミリアに指摘され、カリーナは慌てて表情を取り繕う。
だが今度は、彼女の耳の赤さがその内心を雄弁に語ってしまっていた。
実に分かりやすい反応を見せる友人に、ヘレナが苦笑する。
「お師匠様なら、頼めば運んでくれるんじゃない?」
「……いつまでも、師匠の手を煩わせるわけにはいきませんわ」
「運んで欲しいのは否定しないんだ?」
「まだわたくしの【天翔】では、王都に行くだけで酷く体力を消耗しますもの。ですが、これも訓練ですわ」
「いや、私が言いたいのは、そういうことじゃなくてね……」
「……?」
本気で怪訝そうにしているカリーナに、ヘレナが溜息をついた。
「う~ん、もどかしいというか、何というか……」
「なんのことですの?」
「……そろそろ、私は先に行かせてもらう」
喋り続けている二人を置いて、エミリアがドラゴンの飛翔速度を上げる。
「ちょっ——」
「させませんわ!」
カリーナとヘレナも慌てて走る足を速めて、エミリアの背中を追う。
そこかは、王都というゴールに着くまで、会話なく勝負が続いたのだった。
——————————————————————
「つ、疲れましたわ……」
屋敷を出てから数十分後。
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制御は難しいものの、慣れてしまえば単なる移動手段だけでなく戦闘にも使える、凄まじく有用な魔法だった。
その【天翔】を駆使して、空を行くエミリアのドラゴンに並ぶカリーナ。
かつて自分の師と一緖に見た光景を眼下に見て、彼女は自力でこの景色を見たことによる感慨深さと、いちまつの寂しさを感じた。
そんなカリーナの機微を目敏く察したのか、遅れて横に並んだヘレナが、からかうような笑みを浮かべる。
「やっぽり、カリーナとしてはお師匠様に運ばれたかった?」
「べ、别にわたくしはそんな——」
「そう顔に書いてある」
エミリアに指摘され、カリーナは慌てて表情を取り繕う。
だが今度は、彼女の耳の赤さがその内心を雄弁に語ってしまっていた。
実に分かりやすい反応を見せる友人に、ヘレナが苦笑する。
「お師匠様なら、頼めば運んでくれるんじゃない?」
「……いつまでも、師匠の手を煩わせるわけにはいきませんわ」
「運んで欲しいのは否定しないんだ?」
「まだわたくしの【天翔】では、王都に行くだけで酷く体力を消耗しますもの。ですが、これも訓練ですわ」
「いや、私が言いたいのは、そういうことじゃなくてね……」
「……?」
本気で怪訝そうにしているカリーナに、ヘレナが溜息をついた。
「う~ん、もどかしいというか、何というか……」
「なんのことですの?」
「……そろそろ、私は先に行かせてもらう」
喋り続けている二人を置いて、エミリアがドラゴンの飛翔速度を上げる。
「ちょっ——」
「させませんわ!」
カリーナとヘレナも慌てて走る足を速めて、エミリアの背中を追う。
そこかは、王都というゴールに着くまで、会話なく勝負が続いたのだった。
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「つ、疲れましたわ……」
屋敷を出てから数十分後。